デイドリーム ビリーバー
INDEX|past|will
冗談じゃないです、まったく。 いや、彼が無事だったのはよかったんだけど。
次の日 「なんとか生きてます」って電話きたけど、かなり辛そうで 少ししか話せなくて、様態を詳しくきくこともできなくて
「連絡遅くなってごめんな」って言われて、泣けてきて 更に「ごめんな、さみしかった?」って
「さみしかった」!? 私はそんなコドモじゃないっつうの! 死んじゃったんじゃないかって 意識不明になってるんじゃないかって 苦しんでるんじゃないかって
ただ心配だっただけで
ああでも、 こんな大暴走は、完全にオコサマのなぜる技だわ、とか思いつつ 「無事ならそれでいいの。もういいから、無理しないで、休んで」 ってちょっと大人ぶって言ったら 「ありがとな。早く元気になるから、そしたらえっちなことしような」 って言って、 「こら!なに言ってんの!」って、また私を笑わせて
彼も少し笑っていて
声にはまったく元気がないくせに。 彼は優しい。そして強い。
小さいことでくよくよしたりしない。 深刻になりすぎない。 「俺らが笑って仲良くいられたら、たいていの問題はクリアできるやろ」 って、以前元気をなくしたときに、言われたのを思い出す。
彼はよく笑う。 そして、よく笑わせる。
一方、私は 連絡とれないだけで、泣いて へんな夢見て、また泣いて
冗談じゃないです、まったく。 情けなさすぎます。
仕事休みだったので、頭冷そうと思って、ひとりで一日散歩した。
寒かったけど、 高い空とか、木の枝とか、歩く猫とか、水溜りとか。 そう言えば、私、散歩が好きだったんだ。 最近は、仕事の合間をぬっては、少しの時間でも彼と会っていたから すっかり忘れていた。
隣にだれもいなくて、私の両側を風が吹く感じも すっかり忘れていた。
彼に恋する前の私は、 人恋しくなる日もたまにはあったけど 恋人がいなくてつらいと思ったことはなかった。
むしろ、この、一人で散歩するときの、 感覚が冴え渡るような、研ぎ澄まされるような 贅沢な時間が大好きだった。
私は、この星を一人で歩いているって考えたら 自分がものすごく自由な存在である気がして 愛と冒険にあふれる未来が待っている気がして 鳥肌がたつみたいに気持ちよかった。
私たちが出会う前、 彼も彼女と幸せだったかもしれないけど 私も負けないぐらい、一人で幸せだった、 そんな単純なことを思い出したり。
こんなふうに時々は、意識して 一人の時間を持ったほうがいいのかもしれない。
気分が良かったので 「メールの返信は無理しなくていいからね。 ちょっと元気になって、寝るのに飽きたら読んでください」 って、前置きして、メール連打してやった。連打ってほどでもないか。
笑えるネタをさがして。 もう、売れないお笑い芸人の気分で 数打ちゃあたるみたいに、レベル低いのも送ってやった。
さすがにネタも尽きてきて 初めて顔文字なるものにトライしてみたら、結構楽しくて ちゅーしてる顔、送ってみた。
返事はあいかわらず来なかったけど
だいぶたって ちゅーの顔、3パターン目ぐらいを送った頃
「大好きー」 って、ひとことだけ返ってきて
幸せすぎてくらくらして 散歩を続けていたら怪しい人に思われるんじゃないかってくらい 顔がどうしようもなく笑ってしまうので しばらくその辺に座って、酔いをさます。
こんな一言だけのメールで、贅沢な一人の時間も狂わされる。 彼はまだ、調子悪くて寝ているっていうのに。
まったく、いかれてる。 でも、いかれた私もかなりおもしろい。
|