カエルと、ナマコと、水銀と
n.446



 TESLA SETH LA SEA

=テスラセスラセア=

 僕はどこかの僕が送らず消したメールを拾う

 イマジネーションギャップグラウンドの磁場は不安定だ。イマジネーションギャップグラウンドの電話回線は非常に複雑だ。それは大昔、金鉱をめぐって縦横無尽に掘り進められた坑道に似てる。無計画。法則の不在。そして、一つ。あわよくば辿りつける、という期待感。


 人知れず、電磁波に 垂れ流されたのは、
 それ ボク どこかに期待を ね。 なにも言えないから、優しく ひろって ね。おねがい


 伝書鳩が、爽やかな朝に清々しく、一枚の便箋を足にくくりつけ窓辺に降りる。外で跳ねまわって遊んだ光が、カーテンとカーテンの隙間から僕が小汚いベッドの上で、まどろんでいるのを覗いて、高い声でささやき合う。半透明のジェルに包まれたように、夢のなかで聞くその音は、孤独に慣れた老人が漂流先で送る救難信号。ミニマリズム。安心感。優しく抱かれ、そこにあり続ける愛のような甘さ。ループするワンフレーズ。背中をなぜる手のひらは、完璧な温度。上から下へ。優しく上へ。上から下へ。溶けこみ、日常に同化した永遠のセンテンス。ループこそが。上から下へ。優しく上へ。やわらかさに抱かれて。やわらかさに包まれて。

      繰り返し、
                          繰り返し、
 繰り返し      僕が求めるもの    
                       は

ループこそが、僕の求める、もの。

 震える、たった今命を与えられ、たった今、命を失わんとしている生命の、ふるえ。慟哭にも満たない、かすかな、ふるえを寄せ集めた。そこには、コードはなくて和音が聞こえる。光をとらえたら、一瞬の魂が。鳴らす震えは、寄り集まって、ようやく音へと昇華する。音が、音が聞こえる。かよわくも、全霊をかけて響き渡る。自己主張を始める。ここに! ここに! いる! いる! いた! ここにいた!存在した。ここにいた、から、ここにいたから!!
 一秒をふたつに。こどうと、こどうのあいだに四分音符をいれて、くだいた。せつなに変わった。せつなをのぞくと、ひかりが、生命の様々な色彩が その 一生のすべてをかけて鳴らした、一つの音が響き渡る。一つの生命に対して、ひとつだけ、神様は音符をくれて。
そこには、
               
   こーどはなくて 和音が聞こえる

僕が淘汰する。
 かなしくとも、現実的に
  ただ、それは くやしくも 意識の外側で


2008年08月18日(月)
初日 最新 目次 MAIL


My追加